柿葺

柿葺

地方によって異なる板拵えの工具と工法

木質を直接用いた屋根葺は世界各地で見られますが、その多くは厚板を並べ、石を置くなどの無骨な形のもので、日本の柿葺きのように華麗なまでに発達した地域は他にはありません。

柿葺に使用する柿板は、油分や粘着力があり、木目の通った耐水性のある椹(サワラ)や杉、栗の大径木を輪切りにした赤身材から柾目の薄板を小割にしたものです。その制作にも、かつては三州流や遠州流、出雲流など、四流十一派と称された地域性を色濃く残していました。

もっとも一般的な工法は、名古屋、岐阜、木曽の中部地域を中心に京阪神、九州に及ぶ三州流と呼ばれるものです。原木を切断する木口伐り(玉伐り)の方法は全国ほとんど同じで、木の割れに対して直角になるように切断されます。

なお、原木を輪切りにしたものを大割といい、分掛けして割る時を中割、さらに、分掛けしたものを割る場合は、小割または小扮といいます。

主な板拵えの工法には次のようなものがあります。

平板制作工法

この工法に使用される玉伐り用鋸は、以前は一メートルもの土佐鋸でしたが、現在はチェーンソーなどの動力鋸を使用しています。

赤味材を使用するため、大割の白い部分(白太)を大割り包丁で割り剥がしたのち、原木の大きさにより六つ割りまたは八つ割りの「みかん割り」にします。割り方には、板目割と柾目割がありますが、外観上は柾目割、耐久力は板目割の方が優れています。

次に分取りを行います。分掛け取りは八枚分掛け、四枚分掛けなど公約数に割り、それを箭包丁で木口と両耳を直角に削った後、順次小割りにします。小割りは、八枚掛けを四枚分に、四枚掛けを二枚分に割り落としていきますが、最後の二枚分を割るときの方法と包丁が、三州流と遠州流で異なります。出雲流では、柿葺材料にほとんど栗材を使用しているため、杉、椹(サワラ)を手割する以上の労力と技術が必要で、工具も独自のものを使用しています。

柿軒工法

柿軒は、正柾割が最良とされています。押柾になったものでは、竹釘を打ったとき木目に沿って流れて入るからです。軒板用には、平板用ほど割れ加減のよくない柾や、平板用に作りにくい原木または元玉を使います。

この適材を規定の寸法に鋸挽きし、大割りして白太の部分を剥がしたのち、口になる方のみ木口削りをします。さらに、寸法に合わせて分取りし、両耳を直角に裁ち揃えます。その小軒を一枚ずつ、軒の厚さにあわせて削り加減を調整しながら、ねじれを生じないよう、特殊な削り台で木口一センチ位に表裏とも削り落としていきます。この軒板削りの作業では、関西流と出雲流で異なる削り台と工法が使われます。

屋根葺工法

民家などの場合、ほとんど掛け塲、掛け返しで、各葺板を一・五センチ位の掛け端をかけ、右行左行と交互に葺く技法です。栗材の場合、葺足が大きく跳ねる欠点を抑えるためと考えられます。この拗割工法による板は、屋根に隙間ができると懸念されることがあります。保存よりも見た目の良さを重視する数奇屋造りと異なり、一般社寺の柿葺では、その方がむしろ空気の流通がよく、耐久性が増すともいわれます。なお、特殊な工法として、高知県に土佐葺があると伝えられていますが、現存する建物は見当たりません。

軒付
軒付
平葺
平葺
平葺(葺込銅板入)
平葺(葺込銅板入)
隅葺
隅葺
駒額(こまびたい)
駒額(こまびたい)
品軒付
品軒付